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DPC時代の必須アイテム、

病院原価計算、上手に導入


 病院原価計算には、部門別損益計算行為別原価計算疾病別患者別原価計算があります。部門や診療科の損益を認識するためには部門別損益計算を、そして治療に関するあらゆる行為の原価を測定するのは行為別原価計算を利用します。
また、行為の集積された患者別の原価計算を行う場合には、患者別疾病別原価計算を実施します。それぞれがいかにこれからの医療に必要であるのかについて確認しなければなりません。DPC時代における病院原価計算を行うことは必須事項となっています。

1.部門別損益計算

(目的)

部門別損益計算を行うのは、

@部門や診療科の損益を認識する
A間接費のみを抽出して実施した部門別損益計算により、患者別疾病別原価計算に対し病棟別患者一人一日当り治療間接費を提供する
B予算実績部門別損益管理を行うことで、計画的な経営を行なう
C予算実績部門別損益差額分析を行うことで、問題点を発見。業務改革の対象とする
という理由があります。他に、
D部門別損益計算を正しく行うことにより、医師一人当り利益を算出する
ことや、
E各部門の付加価値分析を行う


ことができるようになります。

(計算方法)

部門別損益計算は、階梯式配賦法を利用します。これは病院の全部門を、間接部門、補助部門、そして主部門に区分し、間接部門で発生したコストを補助部門と主部門に配賦。補助部門のコスト+配賦された間接部門のコストを主部門に配賦というかたちで、最終的には主部門にすべての病院のコストを集計する方法です。

主部門は外来と病棟に区分されます。外来や病棟はそれぞれ各科に区分され、それぞれの科の損益を計算することができます。例えば病棟の整形外科であれば、整形外科病棟独自で発生したコストに間接部門のコストのうち整形外科に該当するコストが配賦され、さらに補助部門独自で発生したコストで整形外科に該当するコスト+間接部門で補助部門に配賦されたコストのうち整形外科分に該当するコストが配賦されることになります。

したがって、以下が成立します。

 

整形外科病棟一次集計コスト

間接部門一次集計コストのうち整形外科病棟に配賦されたコスト

(補助部門一次集計コスト+間接部門一次集計コストで補助部門に配賦されたコスト)のうち整形外科病棟に配賦されたコスト

整形外科病棟コスト

(ポイント)

実務的には、
@一次集計次の発生主義への転換処理
A配賦計算の基礎となる配賦基準の設定
BAに対する重み付け処理
Cいったん共通配賦欄をつくり配賦する項目の処理
など、実務的にノウハウの必要な事項がありますが、原則は上記で対応します。


2.行為別原価計算

(目的)

行為別原価計算は、
@治療に関するあらゆる行為の原価を測定する
A見積り原価計算を行うことにより動作や作業の標準をつくりあげる
Bその集積をもって患者別疾病別原価計算と比較し原価差額を算出する

ために行います。

(計算方法)

行為別原価は、直接材料費、直接労務費、直接経費、治療間接費からなりたちます。
これら、原価要素別にそれぞれ、直接材料費や直接経費は医療材料等の払出し原価から、また直接労務費はタイムスタディから、治療間接費は部門別損益計算から情報を収集して計算が行われます。

なお、タイムスタディは記入シートを作成し、行為を列挙したうえで、患者が入院したとたんにシートを回送しながら時間の記録を行い、賃率を乗じて直接労務費を計算する、というかたちで実施されます。


(ポイント)
患者別疾病別原価計算の基礎となるものであり、行為別原価計算ができていればそれを集計した患者別疾病別原価計算ができることになります。ただ行為別原価計算の対象となる行為を数多く抽出すると、とてつもなく多くの行為がリスト化されます。

多くの行為は役務提供だけであるケースも多く、その部分についてはタイムスタディーをその都度行うことで患者別疾病別原価計算を実施することになります。ここにすなわち行為別原価計算は、タイムスタディ以外の調査、すなわち直接労務費以外の原価要素が発生する行為についてのみこれを行うことが一般的です(勿論、それを理解したうえで全行為をリスト化しすべての行為の原価計算をするということも許容されます)。


3.患者別疾病別原価計算

(目的)

患者別疾病別原価計算は、DPC時代において、
@疾病別の原価を計算する
A疾病別の利益を認識する
B同一疾病の原価計算を多数実施することにより、正規分布における中心原価を計算し原価標準(見積り値)を決定する
C原価標準と実績の比較により原価要素別に課題を抽出する
D課題を解決するプロセスにおける成果をモニタリングするために利用する

ことを目的として実施されます。

(計算方法)

@直接材料費そして、直接経費は、使用した医療材料等、医薬品の払出し原価により計算
A直接労務費は、パス行為、そして追加的にパス未記載行為をリスト化し、タイムスタディにより時間を測定、医師、看護師、コメディカル等別に算出した賃率を乗じて計算
B部門別損益計算から治療間接費を算出

する方法を採用します。

なお、行為別原価計算で標準原価を計算しているのであれば、その集積による標準原価と実際に計算した患者別疾病別原価計算の比較により原価差額を計算。課題を抽出します(抽出した課題は業務改革につなげます)。

(ポイント)
前述した方法により、直接材料費や直接経費を計算するとともに、実際の患者に利用するパス記載行為について、行為別原価計算で実施したと同じタイムスタディを詳細に実施します。また、パスに記載されていない行為を抽出、当該行為についてもタイムスタディを行います。
なお、もともとパスが整備されていない場合には、レセプトで請求できる行為を列挙、あるいはレセプトをそのまま利用してタイムスタディを行うといった方法を採用します。内科系についてはパスがないことが多く、この方法を採用します。但し、その場合であっても本来パス未記載行為について、同じくタイムスタディを行うことになります。


4.DPCと病院原価計算の関係

(1)原価を知る必要

DPCを導入する病院=これからの急性期病院においては、患者別疾病別原価計算を行うことで、個人別に疾病別の原価を把握し利益を認識します。
どの疾病の原価がいくらであるということを知ることは、病院全体の利益をコントロールすることにつながります。DPC上の点数―原価=利益だからです。

勿論、利益がでるから、でないからといって病院が患者や治療を選択することはできません。しかし、病院全体として利益を出すことができれば、比較的利益の出ない他の疾病についても治療を行う原資をつくることができます。利益の出る治療を行うことがひいては病院を維持し、患者や地域住民のために貢献することにつながります。

そもそも、病院では治療の経験が増せば、疾病別原価は逓減することが一般的です。
症例数が多い疾病の原価は逓減します。経験により熟練し早くうまく治療を行うことが可能になるからです。それはいうまでもなく患者にもメリットがあります。

しかし経験を積んでも原価が高くて利益が出ないことがあります。その場合には、原価を逓減するために業務改革を行う必要があります。原価要素別に原価が高い原因を把握し、原因を排除するために医療の質を向上させ、原価を逓減させるのです。

そこにおいては、勿論、医療材料費の仕入原価を引き下げることや、治療間接費を逓減するために固定費を逓減することなど、「絶対的コスト」を削減しなければなりません。しかし、実は絶対的コストでは、継続して成果を得ることはできません。コスト削減には限界があるのです。

それに対して「人が工夫し、創造すること(業務改革)」で、同じ時間で多くの行為を行えるようになることが必要です。これを「単位当りコスト」削減といいます。人が医療の質を向上させることで、生産性を向上させることのなかでコストを削減するのです。
人が技術技能を向上させ仕事の仕組みを変えることで得ることができる成果は無限です。人の力が無限だからです。

国民皆保険制度のなかでは、得られる収入は同じ疾病の治療であれば、条件の同じどの病院においても同じ結果が得られます。そのなかで業務改革が進まない病院は利益を出すことができません。病院が出す利益は患者からの評価の証であり、利益を出せる病院は、患者から訴求され、かつ存続できる病院であるということが証明されます。

病院が医療の質を向上させ利益を出すことで、自らの維持発展する機会を得なければ地域の患者はどうなるのか。
病院は患者別疾病別原価計算を行い、病院の原価構造や利益構造を知る必要があります。
病院経営をDPC下で行なうことの最も重要なことは、病院原価を知り、必要な利益を出すために医療の質を向上させること、生産性をあげることにより利益を出すことです。

そして、病院全体の利益を管理しながら、患者のために、できるかぎりの治療を行う。それが急性期病院のDPC下で果たさなければならない使命です。
患者別疾病別原価計算を行わずに、ただ、懸命に医療を行うだけではいつも不安定なマネジメントを行わざるを得ません。医療を守るためには、病院経営を正しく行う必要があります。国民そして地域住民を守るために、急性期病院はここでいう病院原価計算の仕組みを早急に構築しなければならないのです。




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